婚姻覚書 (講談社学術文庫)

婚姻覚書 (講談社学術文庫)

やっと読み終えることができた。この本を読んでいる間に、他の本を2冊くらい読んだのではないだろうか。
何がこんなに読むのがしんどかったのか?
思うに、各章が猛烈に長い。今時の本にはありえない長さだ。そして、間に入ってくる事例がしんどい。まとまった事例ならよいが、各地の短い事例をぽんぽんぽんと並べられると途中で訳がわからなくなってくる。
この本の読み方としては、4章までよんで、5、6章をとばして、7章の主婦権から読み出すのが身のためだろう。
5、6章は、各地の婚姻のありかたを分析して、各事例をつまどい婚からむこいり婚への展開を前提として、その中に歴史的展開として位置づけていくというなかなかに興味深い作業が行われているのだが、とにかく長いのでぽ〜っとしてしまう。
家の火の祭司者としての家付き娘という原初の姿が、父系社会化する中でその原初の姿をひきずりながらさまざまな婚姻形態へと展開していくという論理は壮大だ。
方法や認識論的に批判するのは容易だろうが、こういった壮大な論理を構築できる人間は斯学ではもういなくなったのではないだろうか。
ここまで書いて思った。昭和32年に出た本を批判しても意味がない。むしろ、この本に出てくる近代初等まで日本各地でおこなわれていた婚姻形態の多様性と、男女関係のありかたの方こそ再認識すべきことなのだろう。
婚姻は子供がうまれて承認されるものであった(だから、それ以前に分かれても何の不利益を蒙ることが少ない)、とか、娘時代に男性と自由な交際をするのは当然であったとか、あるいは、主婦権(女性史などで論じられる主婦とはまったく別の概念である)の話とか、学ぶべきことは山のようにある。